HYBRIDS_vol17
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14見聞録HYBRIDSならではの耳寄り情報満載! 新型プリウスがTNGAで目指した「走りの性能」は2つ。一つは「人の意図に対して素直にクルマが応えること」。そしてもう一つが「上質感を感じること」。これにこだわることで、お客さまに「安全・安心・快適」を提供できると考えたのです。 従来、クルマを開発する際は、操縦安定性、乗り心地、振動など、個別に性能目標を定め、それを達成する手法に注力していました。しかし、新型プリウスでは、クルマに乗り込んだ後、シーン別にどのように感じてもらいたいかを思い描いて走りの性能をコーディネートすることで、バランスを取りました。この時、使ったキーワードは、以下の5つ。・クルマに乗る瞬間「シーンと静か」・走り始めと停止直前「スーッと走りスーッと止まる」・市街地での加減速「滑らか」・ワインディング「軽やか」・高速道路「安心」 これらを実現するために、まず体幹を鍛えました。クルマの体幹とはボデーのこと。このボデー剛性を、できる限り上げることが大切でした。できる限りという言葉を使ったのは、質量を上げないという前提があったから。プリウスの命である燃費性能向上のために、そして軽やかに走るために、無駄な贅肉は必要なかったのです。こうして体幹を鍛えるために役立ったのが、基本骨格の見直し、高張力鋼板の使用率の拡大とLSW等い接合技術の採用、ボデー接着の活用でした。ボデー剛性を上げることで、ねじり剛性という指標は現号比60%以上もアップ。欧州車と比べてもトップレベルとなりました。 次に鍛えたのは、シートとハンドル(インパネ)でした。最終的に乗員にクルマの状態を伝えるのは、この部分。ボデー剛性をいくら上げても、シートやハンドルがぐにゃぐにゃしていてはいけないからです。 剛性感は、骨格だけでなくドアでも向上させました。ドアフレームの剛性を上げることにより、風切り音が低減され、ドアを閉めた時の余分な振動も少なくなります。ロック取り付け部の剛性も、ドア閉まり音に影響します。ドア剛性を上げ、RRドア前端に見切りシールを追加することで、低音が強調され、「ボン!」という上質なドア閉まり音が実現しました。 そして、足を鍛えたのです。今回はRRにダブルウィッシュボーンを採用しました。中間ビームではマウントが2個、ダブルウィッシュボーンでは14個のマウントが使われています。前後左右上下、いろいろな方向に動く足をしっかりと支えながら、余分な力を確実にいなす。これにより操縦安定性と乗り心地が両立できるのです。FRサスペンションはマクファーソン方式ですが、今回は動き始め初期からしなやかに動くように、ショックアブソーバーの傾角を寝かせ、アブソーバーロッドにかかる力を低減して動きやすさを向上させました。サスペンション諸元のチューニングは、ほぼ毎週のように変更をしていました。 最後に、靴にあたるタイヤの開発にも取り組みました。プリウスの場合は低RRCタイヤ(転がり抵抗が小さく燃費に効果的なタイヤ)が絶対条件となります。一般的に、低RRCタイヤを採用すると剛性が低下し、操舵フィーリングや乗り心地が低下するため、ホイールの剛性アップとタイヤリム幅の拡大によって、これを解決しました。 タイヤが決まった後は、靴に合わせて足をつくっていくという手法で走り全体をつくりあげたことが、新型プリウスの特徴です。体幹(ボデー剛性)を鍛えると、靴(タイヤ)を選ばなくてもいい結果(性能)が出せることもわかりました。新型プリウスの開発は、新しい発見を我々にもたらしてくれたのです。体幹を鍛え、足を鍛えるチーフエンジニアが語る新型プリウス開発秘話豊島浩二さん大阪府出身。1985年、トヨタ自動車に入社し、以来17年間ボデー設計に携わる。その後、レクサスの製品企画、チーフエンジニアとして欧州向けの商用車、EVの企画を経て、2011年11月、プリウス、プリウスPHVのチーフエンジニアに就任し、開発を担当。2017年からはEV企画を担当。第5話新型プリウスのチーフエンジニアが語る開発秘話の第5弾をお届けします。今回のテーマは走り。新型プリウスの心地よい走りを生み出すために、体幹、足、そして靴を切り口に、開発者たちがどのような努力を重ねたのかをご紹介します。ぜひご覧ください。ミッドサイズヴィークルカンパニー プリウスチーフエンジニア 豊島浩二さん※次回はいよいよ最終回。「社長のダメ出し」をお楽しみに。

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