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愛知で “そのとち”のおいしいをめぐる。
大地がくれた赤い宝石・大府のぶどう

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「おいしいぶどうが食べたい」 そんな想いに導かれて 風がそよぐ産地をたずねた 太陽を浴びて実る一粒に つくり手の物語が詰まっている
たっぷりの陽ざしを浴びて ゆっくりと、確かに 赤く染まっていく 大府の地で実を結ぶ果実は まるで、大地がくれた宝石 ぎゅっと詰まった甘みと ほのかな酸味が 心に残る余韻をそっと残していく

推し道MAP

竹一ぶどう園

竹一ぶどう園は、愛知県大府市で戦後から約60年続く老舗ぶどう園です。巨峰やシャインマスカットをはじめ、季節ごとに多彩なぶどうを栽培し、幹線道路沿いの直売所では、旬を迎えた新鮮なぶどうが並びます。地元のお客様を中心に親しまれる、地域密着型の農園です。

今回は、生産者の魅力を伝える記事制作を手がけるpicks designが竹一ぶどう園さんを訪問。竹一ぶどう園 3代目の竹内孝幸さんに、ぶどうづくりへの想いや栽培のこだわりについてお話を伺いました。
(写真:左から 竹一ぶどう園・竹内さん 聞き手:picks design・松浦 林)

家業継承の自然な流れ。多品種栽培で60年続く伝統を受け継ぐ

愛知県大府市で「竹一ぶどう園」を営む竹内孝幸(たけうちたかゆき)さんは、戦後から約60年続くぶどう栽培の伝統を受け継ぐ3代目です。現在は両親から経営を引き継ぎ、農園を切り盛りしています。
「元々は柑橘や大根などの野菜を栽培していましたが、祖父の時代からぶどう栽培に転換しました。野菜よりも収益が良いという判断だったようです」と竹内さん。戦後の大府市ではぶどう農家は僅かでしたが、徐々に増加していったといいます。
竹内さんが農業の道を選んだのは中学卒業時でした。「親の背中を見て、自分で仕事を決められる農業の魅力を感じました」と振り返ります。特に家族との時間の豊かさに魅力を感じたそうです。

子どもの頃からぶどうの袋掛けなど簡単な作業を手伝ってきた竹内さん。半田農業高校、岡崎の農業大学校で学んだ後、別のぶどう農家の下で1年間研修し、栽培技術を磨きました。
竹内ぶどう園では、巨峰やシャインマスカットという定番品種に加え、シナノスマイル、黄玉、デラウェアなど、約20種類ものぶどうを栽培。販売は直売所での対面販売が9割を占め、地元のお客様との信頼関係を大切にしています。
「お客様と直接触れ合えることが一番の喜びです。『竹一ぶどう園のぶどうが一番好き』『種類が豊富で選ぶのも楽しい』といった声をいただけると、本当に嬉しくなります」と竹内さん。地域に愛されるぶどう農家として、これからも品質にこだわった果実づくりを続けていきます。

大府市の高温環境が育む甘み豊かな巨峰ぶどう
「狭い農地から生まれた愛知ブランドの巨峰」

「大府の巨峰の甘みの強さに驚かれる方が多い」と竹一ぶどう園の竹内さんはいいます。果物の産地といえば山梨・長野などが有名ですが、愛知県大府市も巨峰栽培が根付いた産地です。現在では市内に30か所以上の直売所があるほど発展しています。
大府市のぶどう栽培の歴史は戦後に遡ります。狭い農地を有効活用するために巨峰栽培が始まり、地域の先駆者が試行錯誤を重ねて安定生産に成功しました。その後、栽培技術は大府市や東浦町に広まり、研修生を受け入れて技術を惜しみなく伝承したことで、この地域に巨峰栽培が根付いていきました。

なぜ愛知県大府市で特徴あるぶどうが育つのでしょうか?大きな理由は、この地域の高温多湿な気候にあります。一般的に果物栽培の理想は「昼間暑く夜涼しい」環境ですが、大府では最高気温と最低気温の差が約8℃程度しかなく、理想とされる10℃以上の寒暖差には及びません。この高温多湿な環境によって「酸味が抜ける」現象が起き、常に温かい環境で育つことで、酸味が少なく甘みが際立つぶどうになるのです。着色は真っ黒な色ではなく、やや赤黒い色合いになりますが、多くの消費者からは「甘みが強くて美味しい」と高評価です。
理想的なぶどう栽培環境は、7-8月の日中が35℃程度、夜間は20℃程度まで下がり、15℃ほどの寒暖差がある状態です。この条件を自然に満たすことが難しい大府では、夕方にスプリンクラーで打ち水をして気温を下げる工夫をしています。
大府市のぶどう栽培は、各農家が独自の栽培方法を持ち、それぞれが工夫を凝らしています。竹内さんは有機質肥料を90%使用するなど、自然に近い栽培を心がけています。各農家が大きさと味のバランスを重視した栽培をすることで、地域ならではの特徴ある巨峰が生み出されています。この地域独自の風土と栽培者の知恵が融合して、大府市の巨峰は甘みが豊かで多くの人に愛される果物となっているのです。

職人技が生む美しいブドウの形 摘果の技

6月上旬、竹一ぶどう園で最も技術を要する作業が「摘果」です。一房に平均で200〜250粒(多いものだと400粒)もついている小さな緑の粒を、わずか30~50粒程度まで間引く繊細な作業。「どう減らして綺麗にやるかっていうのは、すごくコツがいる」と竹内さんが語るように、長年の経験と技術が必要です。
「最後の形が不揃いにならないように計算している」と竹内さん。一粒一粒を見極めながら、美しい房の形になるよう計算して作業を進めます。不要な粒を取り除くことで養分が集中し、残った粒が大きく甘く育つのです。

この時期、約20種類のぶどうはすべて同じ緑色にしか見えません。実際に伺った私たちには全部緑のちっちゃいブドウに見え、素人目には区別がつきません。しかし竹内さんは、わずかな形状の違いだけで「この木はこの種類、この木はこの種類」と瞬時に判別していきます。興味深いのは色の変化で、将来紫になる巨峰も「緑から一度黄色みがかかって、それから紫になる」と竹内さん。緑が抜けて黄色を経由してから最終的な紫色に変わる不思議な過程を辿るのです。

一房一房に実を傷つけない繊細な手捌き

摘果作業で最も印象的なのは、竹内さんの鮮やかなハサミさばきです。「実を傷つけないようにやらなくちゃいけない」と説明しながらも、会話をしているにも関わらず「パパパパパパって切っていく」その手の動きは無駄がありません。一房の摘果にかかる時間は約2分。「ハサミの先っぽで実を傷つけないように」という細心の注意を払いながらの素早い作業は、何十年もの経験があってこそ可能な技術です。
「ぶどうは一本の木でいっぱい房ができるけど、一房一房手をかけてあげないといけない」と竹内さん。すべて手作業で行う摘果作業は、機械では不可能です。この後のジベレリン液処理も「1個ずつつける」手間のかかる作業。竹一ぶどう園の美味しさの背景には、一房一房への丁寧な手入れがあります。手作業だからこそ実現できる品質へのこだわりが、竹一ぶどう園の味を支えているのです。

熟練の技が光る!竹一ぶどう園が育む季節の恵み

竹一ぶどう園の一年は2月のビニール被覆から始まります。これは「気温上昇と病気予防」のための重要工程です。3月中旬には「目揃え」という繊細な作業で、枝全体のバランスを整えます。4〜5月の開花期を経て、6月には「摘粒」という職人技が求められます。「この作業が不適切だと果粒の肥大が不揃いになり、房の形が崩れて品質が低下します」と竹内さん。一つ一つの粒を見極め、不必要な粒を間引くことで養分を集中させます。
梅雨時期にはハウス内の温度管理に注力し、6〜7月には「袋かけ」で害虫や鳥から果実を守ります。8〜9月の収穫期には朝の涼しい時間帯に丁寧に一房ずつハサミで切り取り、「一年の努力が実を結ぶ瞬間」を迎えます。
収穫後の10月には土づくりが始まり、「ふかふか」の土壌にこだわって完熟牛糞やカルシウムを投入。11月の「剪定」で翌シーズンを見据えます。「苗を植えてから2、3年で初収穫できますが、本格的な収穫量となるのは5年目から」と竹内さん。長期的視野と日々の細やかな手入れが、竹一ぶどう園の高品質ぶどうを支えています。

心を込めた販売がお客様との絆を育む

竹一ぶどう園の直売所は、ご両親の代から続く大切な販路です。「お客様に寄り添い、買い求めやすいようにしたい」という思いから、キャッシュレス決済も導入。「現金を持っていなくてもスマホ一つで買えるようにして、お客様の利便性を高めています」と顧客目線のサービス向上に励みます。
遠方からの来客も多く、「大阪や茨城からも来てくださる方がいて、ありがたいです」と笑顔で話す竹内さん。地元客が親戚や友人に送ったぶどうの美味しさに惹かれて訪れるケースが多いといいます。
ホームページには載せていない「隠れメニュー」的な品種も多数用意し、「『お兄ちゃん、また新しい品種作ってる?』と聞かれることもあります」と明かします。対面販売では「差し入れを持ってきてくださるお客様もいて、『兄ちゃん、これ食べな』と声をかけてもらえるのが嬉しい」と目を細めます。
「ぶどうを売って終わりだけでは寂しい。お客様との繋がりがこの仕事の醍醐味です」と語る竹内さん。一人ひとりのお客様を大切にする姿勢が伝わり、それに応えるように多くのお客様から愛されている様子が感じられました。40年近く地域に愛される直売所の魅力は、美味しいぶどうとそこに宿る温かい人間関係にあるようです。

ぶどうそれぞれの特徴を知って楽しもう

竹一ぶどう園で栽培されているぶどうの中から、今回は「巨峰」「シナノスマイル」「黄玉」の特徴について、竹内さんに伺いました。「黄玉」は糖度が高く、「食べた後に鼻から抜けるような芳醇な香り」が特徴です。「果肉はしっかりとしながらも繊細で、一粒一粒に凝縮された甘さがあります」と竹内さんは説明します。「シナノスマイル」は「さくっとした果肉の食感とあっさりした甘さが魅力。特に女性のお客様に人気があり、シナノスマイルだけを求めて来園される方もいます」と話します。「巨峰」は「果汁たっぷりで濃厚な味わいながら、いくら食べても飽きがこない深みがあります」とのこと。

ぶどうの美味しい食べ方は「まず常温で食べられるだけ食べて、食べきれなかったら冷蔵庫で冷やして」というのが竹内さん流だそうです。良いぶどうの見分け方は「緑色の軸と表面の白い粉『ブルーム』がしっかりついているものが新鮮さの証」だと教えてくれました。

オリジナル品種への挑戦

竹内さんは約20種類のぶどうを育てる一方、独自品種の開発にも挑戦しています。「どこにも売っていない自分だけのオリジナル品種を作りたい」と語る竹内さん。以前も挑戦したものの、「知識と技術が足りずにうまくいかなかった」と振り返ります。「シャインマスカットと巨峰を掛け合わせる例では、どの花粉を使うかやタイミングがシビアです。1〜2日ずれるだけで受粉しないこともあり、仕事を全て置いてそれだけに集中しなければならないほど」と難しさを説明します。
それでも竹内さんは「自分の名前を冠したぶどうができれば嬉しい。うちの直売所でしか買えない品種として打ち出したい」と夢を語ります。「自分の手で育てたぶどうがお客様に届き、喜んでもらえることが何よりのやりがい」と竹内さんは目を輝かせます。
最後に、これから竹一ぶどう園のぶどうを味わう方へのメッセージを伺いました。「自信を持って育てたぶどうをお届けします。ぜひご賞味いただいて、旬の大府のぶどうを楽しんでください」と竹内さんは笑顔で語ってくれました。

編集後記

名古屋のすぐ南にある大府市ですが、車で少し走ると景色が一変します。住宅街を抜けた先にキャベツ畑やぶどう園が広がっていて、「さっきまで街中だったのに?」と思わず驚いてしまいました。
そんな景色の変化を楽しみながら進んでいくと見えてくるのが、 竹一ぶどう園さんの大きな看板です。奥さんと一緒に手作りされたそうで、とてもかわいらしい雰囲気でした。
畑にはいくつもの品種のぶどうが並んでいました。まだ色づく前のぶどうは、私にはどれも同じ緑色に見えるのですが、農家さんはそのわずかな違いを見分けるそうです。これがまず、本当にすごい。
さらに驚いたのが、粒を間引く作業です。一房に数百個もついている粒を、美しい形になるように計算しながら整えていくと聞いて、いつも何気なく見ているぶどうの房が、まったく違って見えました。
一房ずつ丁寧に手をかけるからこそ、美しくておいしいぶどうになるんだなと実感しました。

街から少し車を走らせるだけで、自然豊かな畑の景色と、旬のぶどうに出会える大府市。
つくり手の想いを知ると、一粒のぶどうが少し特別に感じられるもの。
次のお出かけには、車で大府のぶどうを訪ねてみてはいかがでしょうか。

竹一ぶどう園

住所
愛知県大府市高丘町3丁目395番地
TEL
0562-47-7605
URL
https://picks-design.com/go/web-2607-1/
備考
販売時期:7月22日(水)~9月上旬(詳しくはHPをご確認ください)
営業時間:9:00~17:00(完売次第終了)

天候や収穫状況により、販売品種・販売時期・営業時間が変わる場合があります。